まだ音大の学生だった頃、
初めて日本に来日したアルノンクール、
ムジカ・アンティクワ・ケルン、
フランス・ブリュッヘンなどのコンサートが、
母校のエオリアンホールやメモリアルホールでありました。
その中でも印象に残っているのが
ムジカ・アンティクワ・ケルンを率いるラインハルト・ゲーベル。
コンサート後の打ち上げに連れて行ってもらって、
わたしは全身ミーハーと緊張の極地で、
エイゴの中に座っていました。
しかし、若きワタクシはその席で果敢に質問。
−あなたの録音にあるクープランのスルタンの解説に、
これは葬送の曲であると書いていますが、
なぜですか?
ラインハルト:この曲の最初に短6度の跳躍があり、
これは必ず死を表す、と。
−なぜ短6度は<死>なんですか?
:昔からそう決まっていて、
ヨーロッパではみんな知っているよ、と。
(今でもそう言った時の彼の、
オトコなのに色っぽい流し目を
思い出します)
その時留学しようと思っていたわたしは、
そういう共通の概念がヨーロッパでは
空間をひらひら飛び交っているようで、
すごいなーと思ったものです。
いや、そればかりか、
その概念が、
そこにいるだけでぱっと頭に飛び込んで来ると
ちょっと信じましたね。
正確には、短六度の跳躍とは限らず、
こういう音の開きは<感嘆>を表すそうです。
クープランの出だしの短6度の跳躍を弾く度に、
誰か死んだのかなあと思っていた私ですが、
最近改めてマラン・マレ作曲の
サント・コロンブのトンボー(追悼)を練習していて、
短6度はありませんでした。
ありゃ。
でも他に、悲しみを象徴する音形があちこちにあるので、
ミッケ!という本で子ども達と
あれこれ見つけ出しているような気分です。
ちなみにクープランの方も下降形で始まるので、
誰も死んでいなくても、
悲しいには違いないのかな。
とにかく若い時に、流し目と一緒に衝撃を受けたせいで、
それ以外にはなかなか思えないものです。
知ってどうする?短6度たち、
しかし、知るとなぜか嬉しい音による象徴。
<怖い絵>(中野京子著)という本があって、
絵の謎解きをしてくれていますが、
わかりやすくてとても面白いです。
音楽にも数字学や音形による表現があり、
その謎解きは<ムジカ・ポエティカ>という本などに
書いてありますが、
これはエイゴ。。。
音楽の謎解きの本も、だれかわかりやすく
日本語で書いてくれないかなあ。